森林の境界不明問題。どうやって対処する?

森のこと

 所有者の高齢化と木材価格の長期低迷などが引き金となって、林業経営に関心がなくなったとされる昨今。

「森林の境界がわからない」という問題が多発している。

所有者から施業の依頼を受け、作業員と森林を歩き、施業方法や境界などを確認して現場にバトンタッチするわけだが、これを曖昧にしたままでいると思わぬトラブルを招きかねない。

そんなトラブルが最近起きた。

部下が図面を持って作業請負業者と境界確認をした。

しかしその後、伐ってしまった後に気が付いた。

「すみませ~ん。境界を間違えました~!」と私に連絡が入る。

あれほど気をつけろと言ってきたのに、どうしてこんな事が起きてしまうのか。

今回は、森林の境界不明問題に迫ってみたいと思う。

境界がわからなくなる理由

田畑のように、毎年の作業が伴うような場所であれば、境界の問題は少ないのかもしれない。

しかし、森林の場合は状況がまったく違う。

戦後の一斉造林時代、先代、あるいは先々代は、あちらこちらと苗木を植えて、森林の造成に勤しんだ。

その際、隣地との境界に何らかの「境」の目印を付けなければならない。

例えば樹種を変える、植栽間隔を極端に離す、杭を打つなど。

植えた当初は両者でわかっていても、それが5年、10年と経つにつれて樹木は生長し、周りの景色も一変してしまう。

「あれ?どこだっけ?」

何年も訪れなければわからなくなってしまうのは仕方ない。

それほど森林の環境は人間に甘くない。

土手、堀などの地形差がある
明らかにわかるように樹種を変える
プラ杭などをポイント毎に打ってある

ご先祖さま達がどうやって境界を取り決めてきたのか、地域やその状況によって様々だろうと思う。

基本的には、沢、道路、尾根などを基準にしていることが多い。

上記のような場合は問題ないのだが、毎日森林調査をする部下ですら間違えてしまうくらい、はっきりと確認できない場合が驚くほど多い。

私はもう、「境界はハナからはっきりしていない」と決めて付けて普段仕事をしている。

境界を明確にする私の方法

では、どうやって確認したら良いのか。

国土調査(山村境界基本調査)

日本の国土の約3分の2が森林であるが、実はその多くでまだ地籍調査が行われていないようだ。

国土交通省によると、平成26年度末時点における山村部の地籍調査進捗率は44%。面積にして約1000万ha以上と膨大である。
一方で、山村部においては土地所有者の高齢化が進んでおり、かつ、土地所有者が地元に居住していない場合も多くなってきている。

つまり、山村部の土地の境界について詳しい人が少なくなっているのだ。

このような状況のなか、R2に国土交通省は「効率的手法導入推進基本調査」に名称を変え対策に取り組んでいるようだが、恐らく、そんな簡単なことでない。

私が管轄するエリアでは9割以上の国土調査が済んでいるため、今まで特段困ったことはないが、国土調査が済んでいなければ、そもそも境界不明、というより、境界がない、と言っても過言ではない。

この手の問題にどうこうできる事ではないので、これ以上言及するのはこれで止める。

測量士に依頼する

ポイントの復元をするための測量「測設」を測量士に依頼する。

以前、先輩が元々あった杭を壊してしまい、所有者に杭の復元を求められてしまった。

数点の復元に、測量士からの請求額が確か両手ほどだった。

境界がまったくわからず、すべてお願いするってことになれば、とんでもない額になるかもしれない。

今まで森林の境界を明確化することを目的として、測量士に依頼したケースをほとんど聞いたことがない。

ちなみに私も測量士の資格を保有しているので、「技術と権限」をもってこれから入りこんでいこうと思っている。

ご用命あれば遠慮なくご連絡を。

GPSを利用する

私が境界確認で良く使うのがGPSだ。

登山で良く使われるお手頃なハンディタイプのものでなく、中国やロシアの衛星もキャッチできる、それなりの精度を持ったものだ。

金額は丸2つ付く。

高価なので簡単には手が出せないが、費用を掛けずにそれなりの精度を求めるとなると、現状、これ以上のものはない。

一筆図形
GPSハンディタイプの受信機
衛星飛来(キャッチ)状況

役場に行って、xy座標の入った「一筆図形」を入手する。

これをGPS端末に入れて、いざ現場へ。

当日の衛星の飛来状況を確認。

谷地や立木が立ち並ぶ箇所では衛星をキャッチできない場合も多いので、注意が必要だ。

余談だが、東京オリンピックの開催に向けて準備されていた新衛星「みちびき」。

これにより数センチの精度で測量が可能になると聞いていた。

多分、端末がまだ追いついていないようなので、近い将来、かなりの精度での測量が可能になることだろう。

キーポイントは、仲裁人!

最近ネット記事などでよく目にする「森林境界問題」。

GPS端末やドローンなどの最新機器を紹介して、その問題を取り上げている。

それそのものの記事はいいんだけど、「境界問題の解決方法」みたいな講座の案内を目にすると、

「大丈夫か?」と正直、ちょっと不安な気持ちになる。

いくら関心がなくなった森林といえど、人の資産に変わりはないし、その境界を跨いで勝手な行為が許される筈がない。

どんなに問題を明確にしたところで、相手によっては「罠」を仕掛けて、まるで手ぐすねを引いて待ったかのように襲い掛かってくるような人もいる。

大事なことは、中立の立場で両者の間に入り、絶対的な信頼のもとで納得させられるかだ。

それにはお互いの立場を尊重できるバランス感覚が求められる。


ある日のこと。共同所有林の方から相談を受けた。

立木を買ってほしいとのことだが、1筆内の所有者が10名。

そしてその境界は現地では確認とれない。もちろん登記上は1筆のみだ。

その方に、

「何か昔取り決めした図面などないですか?」

と聞くと、手書きで適当な1筆図形を描き、定規で直線に10人分に分けたものが出てきた。

もちろん、まったく現地と合うものではなく、ほとんどすべてがデタラメ!

どんな立派な測量士にだって、この問題を解決できる手立てはないだろう。

私は、そんなデタラメな図面でも、当初みんなの同意を得て描かれたものなんだからそれがすべてだ!と腹を括り、

一人一人の面積割合をその図面から測り、その面積を元にして現地に反映した。

それなりに信頼して頂けていたので、

「私はこう考えて、現地でこのように印をつけた。これ以外、もう決めようがない。後の判断は皆さんで!」

とキッパリ申し上げた。

その時は幸い、誰も反論なく問題が解決できた。

言うまでもないが、合意が得られたらすぐに書類などで残して置いた方がいい。

「山なんて誰も来ないからわからない」

なんて高を括っていると、きっといつか痛い目に合うだろう。

誰に頼んだらいいのか?

まず、市町村役場は取り合ってもらえない。

3年で異動になる上、昔のように専門職(山守)を配置していない。

また、「境界」となるとそれなりの技術と経験が求められるので、「行政」を普段の主業務にしている方は難しいだろう。

お近くの森林組合に行って、まずは相談してみるといいと思う。

ただし、「境界」ばかり扱っていても組合の収入にはならないので、相手にしてもらえるかわからない。

請負事業に追われ、そもそも一般の山主さんを相手にしていないようなところもあるので要注意。

どうしようもなくお困りの方がいらっしゃれば、微力ながら私がお手伝いします!ご連絡ください。(お見積り致します)

誤伐の顛末は・・・

部下が侵してしまった誤伐。

GPSであらためて確認したところ、計15本、間違って伐ってしまった。

あらためて境界をGPSで確認
伐って露わになった杭

よくみると境界杭もちゃんとあった。伐って露わになった。

現地の様子をみてみると、私はすぐに違和感を感じた。

境界がはっきりしない違和感。これを見過ごして作業を進めてしまったのは、明らかにこちらの怠慢。

被害側の所有者に現地を確認してもらい、賠償金を提示して、幸いにも快く納得してもらえた。

通常、丸太売上から伐採などの費用を差し引いてお支払いするが、今回はこの所有者に何の非もなく、こちらのミスで勝手に伐った訳だから、売上分をそのままお渡しした。通常のおよそ3倍ほど。

人によってはお怒りになり、ずっと解決できないままでいるケースもある。

また、とんでもない法外な値段を要求してくる方も。

もちろん伐った側の責任なんだが、木材の価値がそれほど高くないなかで、その要求が余りにもかけ離れ過ぎると、やむを得なく法の下で争うことになりかねない。

そんな場合、必ずしも被害側に優位ならないので、落としどころを協議することも重要だと思う(言える立場ではないが)。


以上、森林境界の問題点やその解決方法について述べた。

ちなみに、GPS機器の精度がいくら上がったとしても、それはどこまで行っても参考値にしか過ぎない。

そのデータに決定できる権限がないので、必ず両者立ち合いのもと同意を得ることが重要だ!

ということを最後に付け加えておきたい。

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