静岡ヒノキ6000本伐採問題・どうしてこうなるのか?

森のこと

SNSで林業関係の仲間がシェアしていた話題。我が家にはテレビがないので、この問題はSNSではじめて知った。

【独自】山の所有者激怒「間伐」のはずが・・・ヒノキ6000本“勝手に”伐採 災害リスクも(2022年6月8日)

内容を抜粋すると、

静岡市森林組合が所有者に対して「森林の公共的な責任が果たせていない状況にあるのでやりましょう」と。

そして組合側は、山の4割の木を伐採する「間伐」を提案。

施業後の現地をみて驚いた所有者は、県に問い合わせた。その回答が、

「一般的には、樹高の概ね2倍以内の伐採幅であれば、森林の生態系を著しく破壊しない、風害などの気象害を回避・軽減するなどの利点があると言われていることから、樹高の1.5倍である15メートルの伐採幅としました」

私自身、この事業の中身がまったく理解できなかったので、静岡県のホームページをあらためて見てみた。

静岡県/森の力再生事業 (pref.shizuoka.jp)

読んで字のごとく、森力の再生のための県民税。

HP内だけの内容ではいまいちよくわからなかったが、恐らく、「人工林再生整備事業(森林災害対応型)」に準じた整備だったんだろうか?


「人工林再生整備事業(森林災害対応型)」

災害を受けた箇所は、台風等で被害を受けた倒木が幾重にも折り重なり、地面に光が当たりません。そのため、倒木を片付けることで、林外への流出防止と、広葉樹の自然発生を早期に促し、多様な樹種からなる森林となります。

施業の内容そのものを考えてみる

まず、2haで6,000本とされているので、林齢がおよそ50年としても、3,000本/haでは確かに本数が多すぎる。

傾斜が20~30度の急斜面で標高も高いところにあったことを考えると、今まで間伐等の整備が遅れた林分だったのは間違いないだろう。

そこへ県民税を投入した訳だが、この伐採方法は確かに疑問だ。

列状間伐という考えがあるが、例えば1伐4残(間伐率20%)というようなやり方をするため、定量的な数値が明確になるため、公共系の発注者が好みがちの施業方法だと思っている。

架線系の集材時には必ず「列状」の伐採が必要となるし、また、作業性などを考慮して列状を選択する場合もあるらしい。もちろん、私はやったことがない。

我が国の人工林が戦後一斉に造成され、今、その林分の多くが伐期を迎えているとされている。そのため、全国いたるところで皆伐が進んでおり、国もその方法を推進している傾向があるのも事実だ。

そういった皆伐と比較する訳ではないが、今回のこの現場では、伐採した丸太はそのまま林地に置いてある、いわゆる「捨て間伐」。集材して「木材の利用」を図った訳ではない。

捨て間伐であっても伐採により林地に光をあて、広葉樹の侵入を促すことによる「混交林化」がこの施業の大きな目的だったんだろう。

正直なところ、意図する施業そのものについて、まったく理解できないほどではないが、こういった報道によって与える影響は計り知れない。

ちなみに私は絶対に選択しない方法ではあるが、やっぱり、映像を見る限り、センスが感じられないのは否めない。

原因を推測する

なぜこういった問題に発展したのだろう。その原因はいったいなんだったのか?

個人的に思う原因のひとつに、「県民税」と称した予算だ。

森林組合は日々補助金を取り扱っているだろう。今回のこの訳のわからない事業も「予算消化」の側面があったんではないだろうか。

毎年やっている作業は変わらないのに、予算を組んでくる行政側があれこれとメニューをかえてくる。

名目が同じ事業ならば毎回の予算化が難しい側面もあるんだろうか?増して、県民税からの森の力再生ときたら、何が何でも事業に繋げなければならない。

県民のみならず、国民からも直接頂く税となれば、それだけの説明責任は大きい。もちろん、ほかの公的なものすべてが同じであることは言うまでもないが。

もう一つは、やっぱり森林組合の責任が重いと言わざるを得ない。

所有者への説明もさることながら、現場を預かる立場として、事業の要件ありきで、余りにもそっちに寄りすぎた。

そもそも計画した職員は、この施業に疑問を思わなかったんだろうか?

こんな施業をやっておいて何も感じられなくなったら、林業に携わる者として問題がある。

いくら所有者が林業経営に関心がなくなったとされる昨今においても、所有者にとっては大切な資産。他人様の財産だ。

それを預かる立場として、この顛末には目を覆いたくなる思いなる。情けないとしか言いようがない。

もちろん、決して人のことばかり言ってはいられない。明日は我が身。

もう一度基本に立ち返り、森にとっても山主にとっても良い仕事に繋がるよう、全力で努めていきたい!

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