現在4か所に森林を所有している。その森林蓄積のほとんどがスギで、一部広葉樹やアカマツがある。
私が普段お付き合いする森林所有者のそのほとんどは自ら森林に関わらない。いや、関わろうとしない。だから森林組合や業者に預けてしまう。それらの事業体だってもちろん経営があるので、営利要素がないと動かない。立地が悪いところ等、利益の薄いところは増々置いていかれ、荒廃した森林はずっとそのままになってしまう。こういった森林を放置林と呼ぶんだろう。
森林組合などに預けると、請け負った事業体は生産性と効率化と称して高価な重機を保有し、質よりも量を追い求めるようになる。作業経費がかかる上、木材の価格も巨大なマーケットに飲み込まれてしまう。結果、所有者の利益は最小化する。考えてもみれば当然の流れだが、そういう私も日々こういった流れの仕事を請け負っている。そこに木材を利用するお客さんもいる訳だから、すべてを否定するつもりは勿論ない。ただ折角所有林があるし、楽しく面白くやりたい、やってみたいというのが本音のところでもある。結果、良いとなればどんどん普及すればいいし、もしそうなったらとてもうれしい。
そんななか仲間とずっと考えていたのが、自ら丸太の生産~加工までやって、余すことなく使い切ること。森林の価値を最大化できるのはこれだ!森林の価値の最大化=所有者の利益の最大化。そう思って昨年あたりからいろいろ動いてきた。
・仲間が薪ストーブの代理店になり、加えて簡易製材機も導入。
・手始めに自宅をリノベーションして、地域材をふんだんに使った空間につくりかえた。
・薪ストーブの設置とリノベーションをセットで提供する。
薪ストーブを入口に、その部屋のリノベーションまでやる。年間何件もできる話しではないし、木材使用量もおおよそ把握できる。単純に計算しても現在所有している森林の蓄積だけで十分だし余るほどだ。しかも端材も燃料にできるし、無駄になるものが一切ない。
ビジョンも明確になったが、同時に課題も浮かびあがった。それはどうやって森林から木材を運び出すかだ。
森林の価値を最大化するためには、多くの事業体が保有するような高価な重機ではダメだ。そこでまず最初に考えていたのが、比較的安価な林内作業車の導入だ。丸太を引き寄せるウインチがあり、そのまま荷台に積み込むことができる。車体も小さいので大規模な搬出路網も必要ない。何しろ自伐林業を実践する方々の実績もある。ただ、ずっと引っ掛かっていたのは、この冬季間の積雪に本当に耐えられるのか?ということ。特に立春を過ぎたあたりから雪質も湿ってくるし、5月のGWあたりまで雪解けによる道路のぬかるみも酷い。費用面だけ考えて生産性が落ちるようでは価値の最大化には繋がらない。であれば雪を味方にすればいいんじゃないかとも考えた。それがスノーモービル。ある日欧州の動画で丸太をソリに抱かせて運ぶ姿をみて、単純に「面白い!」に思った。冬季だけの方法にはなるが、面白そうなのでそれは近いうちにやってみよう思う。
そんなこんなでいろいろ考えてばかりいた数日前、秋田県寄りの積雪の多い地域に暮らす所有者さんと森林調査に向かった。「車じゃ山に行けないので、トラクタで行こう」と。その大きなトラクタ、後輪部分が三角形のキャタピラ構造になっていて、前輪ホイールにはチェーンが巻かれていた。普段行き来しない森林に通じる道路の入り口は、主幹道路を何度も除雪した後の大きな雪山になっていることが多いが、そこをそのトラクタがなんなく乗り越え、急斜面もグイグイ登っていった。そのパワーに「すごい!」と思わず叫んでしまった。そしてハッと思い出した!何年か前に廃業した業者から集材機を譲ってもらっていたことを(写真)。この集材機はトラクタのTPOで巻き取ることができ、丸太を抱えながら運び出せる。仲間のところに置いてあったままだった。
以前に、この辺りの地域でこの集材機が結構普及したらしい。今でも何人かの方が使っている。トラクタなんて年間を通じて極めて稼働率の低いもの。それでいて農家にとっては必須アイテムだ。これを林業で使えれば、農業にとっても相乗的に良いんじゃないかと。
ということで早速仲間にその話しをしてやってみようということになった。なんでも買うことばかり考えず、まずは今あるものでやってみよう。もっともっとフットワークを軽くしていきたい。
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