山林所有者の代行で、今回はじめて「保安林指定申請書」を作成し県の機関に提出した。
ところで、そもそも保安林とは?ということで、私も復習しながら以下に記す。
保安林制度の概要
青森県のホームページから抜粋すると、
「私たちの暮らしを守っている森林。そのなかでも特に重要な森林を”保安林”として指定して、森林の持つ多面的な機能を保ち続けるための制度です」
とある。
保安林の種類は全17種類あり、うち青森県内には13種類の保安林が指定されているそうだ。
代表的な保安林を挙げると、
水源かん養保安林
安定した水の確保、きれいな水の確保に役立ち、また、洪水や渇水を防ぐ。
土砂流出防備保安林
土砂の流出、崩壊による土石流などを防ぐ。
土砂崩壊防備保安林
山地の崩壊を防ぎ、災害から道路や住宅などを守る。
飛砂防備保安林
砂浜などから飛んでくる砂を防ぎ、隣接する田畑や住宅を守る。
防風保安林
風による被害から田畑や住宅を守る。
などである。詳しくはコチラ
青森県内の森林の約4割がこの保安林に指定されており、そのうち、水源かん養保安林が全体の7割を占めている。今回私が代行するのもこの「水源かん養保安林」である。
この保安林に指定されると、立木を伐採する時や、作業道を作設する際土地の形質が変わる場合など、その都度許可申請が必要になる。申請後、知事からの許可を得てはじめて作業ができる仕組みになっている。無暗な伐採や開発行為ができないことにはなるが、保安林としての森林の機能を保持するためには当然とも言える。一方、日常的に森林の手入れを熱心にやられている方には煩わしい制度かもしれないが、固定資産税が免除される特約があるため、大面積を保有している山主などにとっては無視できない制度だろう。
今回の経緯から
代行申請に至った経緯がある。
今回の所有者の森林は、約4年ほど前に皆伐し、再造林しないまま放置してあった。所有者には後継者がいないため、その後の経営を放棄されていた。この森林は道路に接するとても立地が良いところ。とある国の機関の方の目にとまり、私に声が掛かった、という経緯だ。
この国の機関は水源林造成事業を推し進めており、今後その造成にあたって、まずは水源かん養保安林として指定を受けなければならない。その後、国機関と所有者で契約を結び、晴れて造成がはじめる。植林、下刈、間伐、主伐と、今後一切の作業は国機関が代行する。植林から下刈等の「保育作業」に関わる費用はすべて国機関が持ち、間伐や主伐時の売上は”分収”という型で分配する。割合は現在3:7。所有者が3割だ。今までは、植林から主伐までの年数を鑑みて、契約期間を60年としてきたケースが多かったが、今回は80年で設定されそうだ。80年先、後継者がどうなっているとか、その時、国の機関がどうあるのかなんて勿論わからない。
所有者には大変喜ばれた。「町や森林組合に譲ろうと思っていた」とおっしゃっていたが、実はそう簡単な話ではない。今回の話しで、80年の猶予と免税権が手に入る。所有者にとっては悪い話ではないだろう。これからの農山村の事情を考えると、今回のケースはひとつの有効な手段になると思っている。
行政手続きにチクり・・・
ちなみに、この保安林の指定申請にあたり、県の機関に提出した時の余談話。
担当者からは「図面を直してくれ」という指示を頂いた。その内容にビックリ!
・等高線の入った図面(1:5000)に、対象森林の図形を間違いないように描き、更に隣接するすべての箇所(筆)が何の地目であるか図示しろ、と来た。
こちらは、申請書、位置図、森林基本計画図、国土調査に基づいた図面、登記簿を提出した。今回の申請に関わる資料って、これ以上のものってあるかい?そもそも一般の所有者が申請できる?
いつも業務としてやっている私だから何とかなるものの、ここまで求めるって、そもそも行政サービスとは何ぞや?と心底疑問に思ってしまう。
とまあ、文句を言っても何も進まないので、役場に行って「一筆図形データ」を5筆分取り寄せ、森林GISに入力。隣接する地目(12筆)を調べ、図面上にその形を表現し、最後PDFに変換。注釈やタイトル、地目と地番もすべて入れて提出した。役場にある「地籍データシステム」みたいなものがあれば簡単かもしれないが、個人情報保護法などもあって簡単には手に入らない。なんだかんだと半日以上掛かったよ。
自分の立場を優先し、上司に提出する「体裁」を究極の目的にしているとしか思えない。これでは山主の、いや、県民全体のためになんかならないぜ!たまにはボヤキもしながら、地方が元気になれるよう、その一助になりたいとあらためて思った本日の出来事だった。
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