後を絶たない「支障木」伐採を考える

木のこと

(写真:樹下がゴルフ場の公園内。落枝の危険性を考慮して、現在伐採中)

 まずは昨日投稿した「指定保安林」の続き。本日TELにて追加の注文があった。図面の修正と現地写真がほしいとのこと。ただし、「雪のある写真はNGなので、完全に解けてからにしましょう・・・」。

 呆然。。。

そこでハッと気が付いた。「そうか、敢えて難易度を高めているんだな」と。闇雲に保安林指定を出していたら、それはそれで如何なもんかと。そう捉えたら尚更、慎重にかつ紳士に応えてやろうと思った。

 話は変わり、ここ何年か「支障木」の伐採依頼が後を絶たない。例えば戦後、家の脇に植えた樹木が瞬く間に成長し、気が付いたら手が付けられない状態になった、というケースだ。都市部では、樹木のあるところにどんどん建築物が出来てきた、という背景もあるだろう。

危険を感じて依頼する

 本業の「林業」は、森林内で育てた樹木を伐採し、「伐ったら植える」を基本として資源が循環することを考える。

一方で、この支障木(我々はこう呼んでいる)は、いつの間にか大木になってしまった樹木が、人間の暮らしとうまく共存できない状態になったため、1度きりの対処を施す作業だ。

 確かに、住宅脇に大木があれば、「台風が来たら倒れるんじゃないか」と心配になる。実際、木の実が落下して毎年家の窓ガラスが割れた、なんてケースもあった。

落枝も心配だ。庭先で子供が安心して遊んでいられない。私のところのキコリは、落枝がヘルメットに直撃して見事に割れたことがある。ヘルメットをしていなかったら間違いなく助からなかっただろう。

 その他、神社や寺、畑や田の脇(日照)、お墓など、数えたらキリがないほど、今まで本当に様々な問い合わせに応えてきた。

お墓脇の作業

特殊技術を要する

 この支障木伐採には、かなりの経験と技術が求められる。「チェンソーで伐倒経験がある」ぐらいではとても危ない。軽率な判断で事故を起こしたケースがよくある。

もちろん、万が一に備えて、いつも保険に加入している。

 私の場合、現地確認する際はまず「重機が入れるか」を考える。電線に掛からないか、軒に当たらないか、隣家の庭を借りられないか・・・。段取りだけでも結構大変だ。例え高所作業車やクレーン車が入れて作業ができたとしても、伐った木の処分、特に枝の片づけをどうするか等、様々なことを依頼者と協議しながら決めていかなければならない。

 重機が入れない場合は、特殊伐採の出番だ。特別な教育を受けたロープワークで、木を倒さないように、少しずつ、樹木の先端から地上に下ろしていく。

 奈良・京都で活躍する「アーボジャパン」の代表の方と、あるところで知り合いなった。

彼は単身イギリスに渡り、その本場で特殊伐採の技術を習得したらしく、今では毎日のように歴史的建造物の樹上で作業している、というお話を伺った。「怖くないですか?」というバカげた私の質問に「地上の伐採より安全だよ」とサラリと答えられた。日々の技術の研鑽の賜物だろう。その方は、むやみやたらな伐採依頼に異を唱えるかの如く、樹木医も取得されていた。

「少しでもこちらの意見を聞いてもらいたくて」。

その姿勢に感銘を受けたことを今でも覚えている。

費用が掛かる

 さて、この支障木伐採に掛かる費用を少しだけ考えてみる。

住居に併設された小屋脇に並ぶケヤキの大木群
かなりの大木

こちらも現在進行中の現場だ。

仲間の依頼を受けて、名実ともに「地域一番」と評判の業者に依頼した。

まずは条件として、

住宅のある側から作業を行う場合、ラフタークレーンで樹木を吊りながら、ゆっくりと地上に下ろすやり方。この場合、クレーンが入れるのか、樹木を置けるスペースがあるのかを検討する。

反対側は住宅街になっており、ちょうどここの接する土地だけが「放置された宅地」のままになっていた。

ということで、見積条件は2種類になる。

反対側の土地所有者の了解が得られるかどうか。結果は快諾いただき、反対側から作業することに。

大木伐採のため大型機械を回送したいところだが、住宅街のため道路幅がない。重機の選定に悩む。

更に、重機で土地を荒らしてしまう恐れのある場合は、敷鉄板も必要だ。

 伐った丸太が何かしら販売できれば、作業費とある程度相殺できる。しかし、枝の処分となると「産廃」扱いになり、おおよそこの辺りでは1トンあたり15,000~20,000円とかなり費用が嵩む。依頼者との交渉では、あらかじめ枝の処分についても十分に協議をしておかなければならない。

 ザクっと見積もると、

 ・重機回送 1台×20,000=20,000

 ・特殊伐採工 2名×2日×50,000=200,000

 ・普通作業員 2名×3日×20,000=120,000

 ・クレーン 2日×80,000=160,000

 ・グラップル 3日×30,000=90,000

 ・枝処分 20トン×20,000=400,000

 ・丸太収入 50m3×10,000=ー500,000

 ・丸太運賃 50m3×2,000=100,000

 ・管理費、諸経費(20~40%?)

あくまで参考までに(この現場の見積ではないので悪しからず)。

特殊伐採工が高い!と思われるが、命を張っている作業だから高くないと誰もやらない。相場は3~5万くらいかな。

枝を処分するとなると、トータル100万くらいになってしまうかも。

支障木伐採を検討されている方がいたら、専門の業者に依頼することをおススメする。

もちろん見積は何社かに依頼した方が良い。

以上、支障木について、多少イメージが掴めたかと思う。

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